カテゴリー: 法人税

  • 30万円未満なら経費?少額減価償却資産とは?

    30万円未満なら経費?少額減価償却資産とは?

    みなさんこんにちは。

    この記事では、中小企業で適用できる、30万円未満の固定資産「少額減価償却資産」についてお話ししていきます。

    備品等を購入した際、資産計上するよりも一括で経費にできた方が法人税の計算上お得になりますよね。節税効果が高く、手軽に使用することのできる非常にオススメな制度、それが少額減価償却資産の特例です。

    そんな、資産ではなく経費として計上できる少額減価償却資産についてご紹介します。

    通常の減価償却の場合

    まずは減価償却という概念と、通常の処理方法についてご説明いたします。

    減価償却とは、10万円以上の固定資産を、耐用年数(使用可能期間)に従って毎年少しずつ費用計上していくことをいいます。

    固定資産は、時間の経過や使用により価値が減少すると考えられるため、資産の価値を少しずつ減少させていき、使用分を費用として計上するという考え方に基づきます。

    例えば、取得価額150万円、耐用年数10年、毎年定額を償却する固定資産を購入した場合、固定資産の購入時には資産計上を行います。そして、その後決算時に、毎年15万円ずつ費用計上をしていくことになります。

    (毎年一定率をかけて償却していく方法や、年の途中で購入した場合に月割で償却額を求める方法もありますが、今回のメイン論点ではないためこちらの記事では割愛いたします。)

    少額減価償却資産とは?

    続いてメイン論点、少額減価償却資産についてご紹介します。

    こちらの少額減価償却資産ですが、まず、国税庁の該当ページには次のように記載されています。

    「中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成1841日から令和2331日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。」

    通常は10万円以上の減価償却資産(固定資産とほぼ同義です)を取得した場合、資産計上をする必要があります。

    しかし、中小企業の場合、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得して、事業に使用した場合は、その取得価額の全額を損金の額、いわゆる経費の額にすることができます。

    ここでいう「中小企業」ですが、

    • 資本金の額又は出資金の額が1億円以下
    • 発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されていない法人
    • その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されていない法人
    • 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人(受託法人を除きます。)

    すなわち、基本的には資本金の額又は出資金の額が1億円以下で、大規模法人の支配を受けていない企業ということになります。

    このような企業は、取得価額が30万円未満である減価償却資産を購入した場合、通常資産計上しなければならないところを、全額その年の経費として計上することが可能となります。

    資本金1億円以下であっても、大企業の支配を受けている企業は少額減価償却資産の特例の対象外となりますのでご注意ください!

    少額減価償却資産の処理方法

    それでは実際に、少額減価償却資産の処理方法についてご説明したいと思います。

    処理方法はいくつかありますが、今回は一番基本的な方法をご紹介いたします。

    では今回は、20万円のノートパソコンを購入した場合を例に考えてみましょう。

    1. 購入時

      購入時は通常通りに資産計上をします。ノートパソコンは「工具器具備品」となりますので、こちらで計上をおこないます。

       借方          貸方       摘要

       工具器具備品 200,000 / 現金 200,000     購入 ノートパソコン

      こちらの状態では資産計上されてしまっているので、次の処理をすることで費用計上していきたいと思います。

    2. 即時償却

      購入した少額減価償却資産を全額償却することを即時償却といいます。少額減価償却資産の特例を用いる場合、この即時償却をおこなうことで、取得価額の全額を費用計上できることになります。

       借方         貸方         摘要

       減価償却費 200,000 / 工具器具備品 200,000 ノートパソコン 即時償却

      この仕訳をおこなうことで、工具器具備品が消し込まれ、

      減価償却費 200,000 / 現金 200,000

      となります。減価償却費は費用科目のため、これで全額費用計上ができたことになります。

      こちらの仕訳は購入の仕訳をきったあとすぐに計上しても、決算時にまとめて計上してもどちらでも問題ありません。ですが、個人的には備忘を兼ねることと決算時の処理を少なくすることを考えて、購入の仕訳をきったあとですぐに計上することをオススメいたします。

    3. 期末

      少額減価償却資産の特例を用いた場合、法人税の申告書の「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書 別表十六()」を作成する必要があります。

      税込経理の場合は税込価格を、税抜経理の場合は税抜価格を記入してください。

      購入時に即時償却の仕訳をきっていなかった場合は、この段階で決算整理仕訳として計上することになります。

    注意点

    とても便利で節税効果の高い少額減価償却資産の特例制度ですが、使用に際していくつかの注意点があります。それらをご紹介したいと思います。

    1. 青色申告で確定申告をすること

      少額減価償却資産の特例を受けるためには、青色申告で確定申告をする必要があります。

      白色申告での確定申告の場合、こちらの特例制度は使用できませんのでお気をつけください。

    2. 年間300万円未満であること

      少額減価償却資産として計上できる金額の上限は、年間300万円未満となり、それを超えた部分の金額は、一単位あたり30万円未満の償却資産であっても少額減価償却資産にはできないので注意が必要です。

      例えば、その年に28万円のノートパソコンを11台購入したとします。10台分は合計280万円なので少額減価償却資産に計上することができますが、11台ですと308万円となり、300万円以上の金額となってしまいます。

      この場合は、超えてしまう1台分について通常の資産計上をおこなわなければなりません。

      また、この300万円という金額は、税込経理か税抜経理のどちらを用いて経理処理しているかによっても変わってきます。

      税込経理を使用している場合は税込で300万円、税抜経理を使用している場合は税抜で300万円となります。

      会計ソフトを使用されていれば簡単に計算できるかとは思いますが、注意が必要な点ではありますのでご留意ください。

    3. 固定資産税の対象にはなる

      貸借対照表上は資産計上されていない少額減価償却資産ですが、毎年行われる償却資産の申告対象にはなりますので、こちら注意が必要です。

      資産計上されていないから申告もしなくていい、というわけではないのでお気をつけください。

    まとめ

    少額減価償却資産の特例制度について簡単にまとめると

    • 青色申告による確定申告をおこなっており、大企業の支配を受けていない中小企業が使える
    • 取得価額が30万円未満である償却資産を全額費用計上することができる
    • 法人税申告書の別表十六()を作成する必要がある
    • 使用できる年間での合計額は300万円未満

    このような制度です。

    何点かポイントを押さえれば簡単に使うことのできる、節税制度が非常に大きく有用ですので、ぜひ活用していただきたいと思います。

    皆様に正しく、そして有効に接税制度を活用いただけますと幸いです。

    それでは、今回の記事は以上とさせていただきます。

    お読みいただき、ありがとうございました。

  • 役員報酬で気を付けるべきポイント

    役員報酬で気を付けるべきポイント

    はじめに

    会社を運営していくにあたり必ずと考えなければならない資金繰り。

    会社を設立した本人などに支払われる役員報酬はあらゆる面でこの資金繰りと直結することとなります。

    何も考えずに役員報酬を支払うと法人税や所得税が想像以上に生じることとなります。

    そのような事態を避けるためにも今一度役員報酬で気をつけるべきポイントを見て行きましょう。

    役員報酬とは?

    役員報酬とは役員に対する給与を意味します。

    そのため正確に「役員とは誰であるか」を認識する必要がございます。

    役員については会社法において明確に規定をしており、かつ、会社法上は役員に該当しないが法人税法上において「役員」とみなす場合もございます。

     

    会社法上の役員

    法人税法上の役員

    経営方針に対する意思決定権を有している

    (取締役等)

    登記をしなければならない

    ×

    共通事項の会社である経営方針を決める人員と認識すると分かりやすいでしょう。

    法人税法上の役員とは会社法において役員には該当しないが、実質的に役員と同様の発言力を持っている人物を指します。そういった人物へ支払う給料も「役員報酬」に該当する点に注意が必要です。

    たとえば社長の配偶者などが該当する場合がございます。

     ※株主が少数、かつ、役員の親族であるなどの要件に該当した場合に限る。

    役員報酬はいつまでに決めればいい?

    世の経営者は下記のような叫びがあると思います。

    ・給料なんて利益が出たら出せばいい

    ・利益は決算が固まるまで確定しないから自分の給料は後から決めればいい

    ただ、このように考えた結果資金繰り面で大きな損失被る可能性がございますのでまずは役員報酬をいつまでに、そしてどのように決めればいいかを見て行きましょう。

    役員報酬はいつまでに決めればいいか

     これは「3か月以内」となります。

     具体的には下記の通りです。

    事由

    日付の例

    決定の期限

    設立初年度

    2020115

    202024

    2期目以降

    2021331日決算の場合

    2020630

    役員報酬はどのように決めればいいか

    原則として定款に定めた金額とする。

    ただし、定款に明確な金額等の記載がない場合は株主総会にて決定がされます。

    なお、一般的には後者の方法が採用されることが多いです。

    このため、2期目以降は株主総会において役員報酬を据え置くか変更するかを決めることとなります。

    なお、設立初年度についても設立後3カ月以内に株主総会を開催して決定をするというのが正しい役員報酬の決め方となります。

     ※所定の時期に開催される株主総会を「定時株主総会」、それ以外の株主総会を「臨時株主総会」と呼びます。

    役員報酬の法人税法上の取り扱い

    法人税法における役員報酬は下記のいずれかに該当しない場合は費用として認められません

    そのため支給の方法を間違えるとその分が費用から取り除かれてしまい、税金が課税されることとなります。

    法人税法における役員報酬

    定期同額給与

    条文

    その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの

    解説

    毎月同額であること。

    なお、事業年度を通じて「額面が同額」又は「手取りが同額」のいずれかであれば良い

    事前確定届出給与

    条文

    その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭に基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもので納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしていること。

    解説

    ・支給日が決まっていること

    ・支給する金額が決まっていること

    ・これらの決定事項を税務署に提出していること

     が条件。

    一般的には賞与のことを指します。

    業績連動給与

    一般的に大企業など大量の株主がいる法人が対象と成るため本項においては割愛します。

    費用にならないとはどういう意味か】

    前提

    ・当期の売上…10,000,000

    ・当期の諸費用…9,000,000

    ・内、役員報酬…5,000,000

     

    正しく決定・支給をした場合

    上記①~③に該当しない場合

    売上高

    +10,000,000

    +10,000,000

    諸経費

    9,000,000

    9,000,000

    経費にならない役員報酬

    +5,000,000

    差引利益

    1,000,000

    6,000,000

    上記に対する法人税

    300,000

    1,800,000

    法人税は概算値として実効税率30%として計算しています。

    上記のように誤った方法によって支給等をした場合は法人税が何倍も異なる可能性があります。

    そのうえ、役員報酬は給料であるため所得税も課税されるので資金繰りが圧迫される結果となるでしょう。

    役員報酬の金額はいくらにするべき?

    どのようにすれば税務上役員報酬として認められるかという点と、費用にならないことのリスクが分かったところで次はいくらにするべきかを考える必要があります。

    ここでは役員報酬によって影響の出る項目とその税率等を見てみましょう。

    役員報酬を支給することによる因果関係

    対象項目

    変動事由

    法人税

    費用計上により、法人税が減少する

    所得税

    給与獲得により、所得税が増加する

    住民税

    給与獲得により、住民税が増加する

    社会保険料

    給与に応じて、社会保険料が増加する

    役員本人の資産形成

    会社にお金が留保されず、手元現金として役員の資産を形成する

    相続税

    役員報酬を使わず貯金のみした場合、相続財産となる

    それぞれの税率等

    対象項目

    税率

    法人税

    実効税率 約30%

    所得税

    超過累進課税

    住民税

    10

    社会保険料

    健康保険9.87

    介護保険1.79

    厚生年金18.3

    本人の資産形成

    手取りを得られる。

    相続税

    超過累進税率

    ただし、現金は相続税の特例の適用がないため使い道を検討する必要あり

    中小法人を前提

    所得税の超過累進税率は5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%と推移する

    社会保険料は東京都の協会けんぽを前提

    上記の図を見ると法人税として課税してしまうのが一番有利に見えます。

    給与を支給すると「所得税率+住民税率+社会保険料率」となるため。

    ただ、税率だけを見て一概に有利判定は出来ないためより具体的に数字を使いながら見ていきましょう。

    上記を加味した決定方法

    役員報酬を決めるにあたって一番重要となるのは税率の前提となる利益、つまりは事業計画をどこまで詰めることが出来るかとなります。

    これは初めの3か月で残りの9か月分の利益予測をしなければならないことを意味します。

    もし事業計画において利益が5,000,000円生じる見込みであれば下記のように考えられます。

    参考

    ・法人税=(利益-役員報酬-社会保険料会社負担分約(14.98%)×税率

    ・所得税=(役員報酬-社会保険料本人負担分(14.98)-その他控除)×税率

    もし役員報酬を3,960,000円とした場合は下記のようになります

     

    役員報酬なし

    法人税

    所得税

    • 当初利益

    5,000,000

    5,000,000

    • 役員報酬

    3,960,000

    3,960,000

    • 社会保険料

    593,208

    593,208

    • その他所得控除

    1,712,000

    • 差引

    5,000,000

    446,792

    1,654,792

    • 税金概算値

    1,500,000

    133,800

    84,400

    給与については所得税における給与所得控除と基礎控除のみを加味しております。

    法人税率は実効税率30%で計算

    役員報酬なしの場合は別途国民年金の支払い義務が生じます

    住民税は170,400円生じます

    結論

    上記のシミュレーションの場合結果は下記の通りとなる。

    ①役員報酬を支給しなかった場合の負担金額

    1,500,000円(法人税)+198,480円(国民年金)

    国民健康保険料は割愛

    ②役員報酬を4,000,000円支給した場合の負担額

    1,575,016円(法人税、所得税、住民税、社会保険料)

    このように社会保険料まで加味すると役員報酬を支給したほうが有利となる場合がございます。

    ただし、役員報酬による正確な節税案は正確な事業計画があって初めて成り立ちます。

    そのため事業計画をただの数字遊びとせず、決算に近しい予測を立てることが重要となります。

    金額を変更する場合の注意事項

    前述の通り役員報酬(定期同額給与)は毎月同額でなければなりません。

    従って正しい決定時期以外の時期に変更した場合はそれ相応のペナルティが生じてしまいます。

    そのペナルティとは「増額又は減額の前後における差額を費用としない」となります。

    具体例

    ①途中で増額した場合

    年間の役員報酬  元々の役員報酬の12か月分の金額 = 費用にならない額

    ②途中で減額した場合

    年間の役員報酬  減額後の役員報酬の12か月分の金額 = 費用にならない額

    終わりに

    このように役員報酬とは役員本人の手取り、それに伴う所得税・住民税や社会保険料といった個人への課税と法人の所得を圧縮することによる法人税の節税、そしてその後は相続財産の形成や将来の厚生年金への影響など様々な事由へと派生致します。

    決めるまでの期限、決め方法を誤ると大きな損失に繋がりかねます。

    生活に直結する事項であるが故に事業計画はしっかりと練ったうえで役員報酬を決めていきましょう。

  • 経営セーフティ共済を活用すべき5つの理由

    経営セーフティ共済を活用すべき5つの理由

     

    経営セーフティ共済、聞いたことがない方は良い機会なので加入を検討してみてはいかがでしょうか。

    共済の目的や内容がよくわからなくて、加入を躊躇されている方が意外と多いのではないかと思います。

    経営セーフティ共済には、この共済にしかない独特の魅力があります。

    ここでは、経営セーフティ共済の基本情報と加入すべき5つのメリットをわかりやすくまとめてあります。理解を深めて、経営の一助になさってください。

    経営セーフティ共済制度とは

    経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)をご存知ですか。

    中小企業を対象とした共済で、一般的に「加入したら得になる」と言われます。

    本当にそうなのでしょうか。

    細かいところを一度、整理してみましょう。

    経営セーフティ共済制度概要

    独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営している共済制度です。

    中小企業の連鎖倒産防止の為の支え合いを目的としています。

    取引先が万が一倒産した場合、簡単に必要となる資金の貸付が受けられます。

    そして、掛金は税制優遇措置が受けられる利点があります。

    誰でも加入資格があるのか

    継続して1年以上」事業を行っている中小企業者(法人・個人事業主)が対象です。

    1年以上の部分を見落としがちなので、注意が必要です。

    業種ごとに、加入可能な会社等の規模に制限があります。

    資本金又は出資金と常時使用する従業員数で区分されています。

    次表にまとめましたので、参考になさってください。

    参照:https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/entry/eligibility/index.html

    組合も加入対象になります。

    企業組合・協同組合、共同生産、共同販売等の共同事業を行っている事業協同組合、事業協同小組合、商工組合があります。

    医療法人、農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合、外国法人等は加入対象外ですので、お気をつけください。

    掛金の仕組み

    掛金の月額は、5,000円~200,000(5,000円刻み)で自由に選択できます。

    納付掛金累計8,000,000に達するまで、掛けることができます。

    前納(当月分+11か月分前払)で、一括年払いすることも可能です。

    その場合、1年間にかけられる最大金額は2,400,000(200,000×12か月)となります。

    経営セーフティ共済を活用しよう

    経営セーフティ共済は、単なる倒産に備えるための保険機能に留まりません。

    事業に活用すべきメリットが、他にもいろいろ存在します。使い方を知って、上手に経営に活かしましょう。

    税の繰延べ、節税効果がある

    経営セーフティ共済の魅力は、掛金が損金算入できる所です。

    本来の機能より、税の繰延べ・節税効果を期待して加入するケースの方が多いのではないでしょうか。

    積立しながら損金算入できるものは、経営セーフティ共済だけです。

    かつて、民間保険会社の定期保険で同等の機能を有する商品が販売されていましたが、金融庁・国税庁の規制強化を背景に、2019年販売中止に追い込まれています。

    決算対策として、年払いを実施すると年間最大2,400,000円の利益圧縮の効果が得られ

    ます。

    制度の限度として、8,000,000円までの掛け込みが認められていますので、最大掛金月額200,000円だった場合、3年は年間2,400,000円分の税金を支払わなくて済みます。

    解約した年に税金がかかりますが、赤字や大きな経費が出る年に解約すればその分の税金を心配する必要はありません。

    退職金準備に有効

    8,000,000円までという制限はありますが、掛金を損金算入しながら退職金原資を準備

    できるのは経営者にとって有り難いことです。

    退職イベントがあると、どうしても資金繰りが不安定になりがちですが、その下支えに効果を発揮します。

    金額の制限上、これだけでは退職金準備には不十分ですが民間保険などと組み合わせて活用すれば、無駄なく退職金原資を確保できます。

    退職金は大きな経費支出を伴います。退職金と経営セーフティ共済解約がセットで行われるよう予定しておけば、税金も発生させずに済みます。

    経営セーフティ共済は使い勝手がよい

    経営セーフティ共済は、掛金の減額・増額が割と簡単な手続きでできます。

    中小機構の書類を1枚提出して受理されれば、すぐ実行できます。

    経営状況に応じて、掛け方を自在に変えられるのは安心で助かります。

    経営セーフティ共済は、掛金の掛け止めもできます。

    8,000,000円まで掛け終わったら、そのまま必要な時まで置いておくことができます。

    期限の制限はありません。

    民間保険の場合、解約返戻金のピークが下がったり、据え置き期間が決まっていたりしますが、経営セーフティ共済ではその心配がありません。

    経営セーフティ共済は、再加入が可能です。

    上限金額まで掛け、支払いに必要な年に解約したら、また、すぐ再加入して積立を開始することができます。

    予期せぬ取引先の倒産に備えられる

    経営セーフティ共済の本来目的は、連鎖倒産防止です。

    不測の事態が起こった場合、無担保・保証人不要で無利息貸付が受けられます。

    借りられる資金の上限は、実際の被害額と80,000,000万円を比較して少ない金額までとなります。

    単位は50,000円刻みです。

    返済期間は次の表で確認してください。借入金額によって決まっています。

    いずれも、6か月の据え置き期間があります。

    参照: https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/proceed/index.html

    借入金は、返済期間に応じての均等返済になります。

    一時的な資金貸付が受けられる

    経営セーフティ共済に一時貸付制度があることはあまり知られていないかもしれません。

     任意のタイミングで、解約手当金の95%を上限に借入ができます。

     緊急にまとまった資金が必要なとき、有効な手段です。

    無担保・保証人不要で、利率はその時の時勢で変わります。

    返済期間1年、利息は借入時一括前払い、元本は期限一括返済になります。

    経営セーフティ共済加入の注意点

    ここまで、経営セーフティ共済の良さをご紹介してきましたが、当然、良いところだけではありません。

    取扱に注意するべき部分もあるので、確認していきましょう。

    任意解約には元本割れリスクがある

    経営セーフティ共済は、契約者が任意に解約することができます。

    しかし、納付月数によっては100%掛金が戻ってこないので注意しましょう。

    特に1年未満の解約は避けてください。

    掛金のうち戻ってくる金額0だからです。

    解約には任意の他に、みなし解約と機構解約があります。

    みなし解約とは、法人解散など解約とみなされる事由が発生した場合の解約です。

    機構解約とは、不正があった場合に中小機構が行う解約です。

    いずれの解約も1年未満の場合、返戻率0%ですので気をつけましょう。

    次の表に解約返戻率をまとめましたので、参考になさってください。

    参照: https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/loan/index.html

    解約のタイミング

    経営セーフティ共済の掛金は、掛け込み時に損金算入され、解約時に益金になる仕組みです。

    解約のタイミングを計画的に図って使わないと、単なる税金の繰延べで終わってしまいます。節税の効果が発揮されません。

    好調の決算で、大きな黒字が出るときに解約してしまうと税金をいたずらに増やしてしまう結果になります。

    会社の状況によっては思いの外、長期間掛金を上限まで積立てたまま置いておくことになります。

    加入の際は、掛金の出口についてもよく検討してみることが大事です。

    共済が使えない場合がある

    取引先の倒産の定義について補足しておきます。

    取引先について客観的事実として倒産を示す、法的整理など7つの項目があります。

    7つのどれかに該当すると、共済金の貸付が受けられます。

    ただし、取引先の「夜逃げ」は倒産とはみなされませんので注意が必要です。

    また、倒産日から6か月を経過してしまうと、借入手続きができなくなる点にも注意してください。

    経営セーフティ共済の会計

    経営セーフティ共済に加入した後、日々の会計処理はどうなるのでしょうか。

    決算申告処理をどうすれば良いのか、気になるところです。順番に確認しましょう。

       期中掛金の経理処理

    経営セーフティ共済の掛金は支払った時、損金になります。

    掛金は、経費処理します。

    「保険料」で仕訳してください。

    掛金がほぼ戻る性質から、資産計上することもできます。

    貸借対照表上に、投資その他の資産と言うカテゴリーがあります。

    会計ソフトに標準的に入っている「長期貸付金」、「敷金」などがある場所です。

    「保険積立金」勘定が既にあるのであれば使って処理しても良いです。

    「倒産防止共済掛金」で新規勘定科目を作成する方が一目瞭然、わかりやすいです。

    課税区分は対象外です。

    損金算入のための申告処理

    掛金を経費処理した場合、申告処理は必要ありません。

    別表10(7)特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書を添付するだけで大丈夫です。

    経営セーフティ共済の掛金を資産計上した場合、年間掛け込み額が損金として損益計算書上に反映されません。

    別途、申告書上で処理が必要です。

    別表4で掛金相当額を減算し、別表10(7)特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書を添付します。

    解約金の取り扱い

    掛金を経費処理してきた場合、経営セーフティ共済の解約金が入金された時は「雑収入」で仕訳することになります。

    掛金を資産計上処理としてきた場合、解約金が入金された時いつもと逆仕訳をすることになります。それで、今までの資産計上分が全額取崩しになります。

    仕訳だけでは損益計算書上、解約金額が収入として反映されません。

    別途、申告書上で処理が必要です。

    別表4で解約金相当額を加算してください。

    まとめ

    経営セーフティ共済は、条件に該当する中業企業で1年以上事業を継続していれば、誰でも加入できます。

     掛金は、月額5,000円~200,000(5,000円刻み)で自由に決めることができます。

     

     加入に際しては、節税・退職金準備・機動性の良さ・共済金貸付・一時貸付の5つメリッ

     トがありました。

     早期任意解約と解約のタイミングについては、多少リスクがありますので注意が必要で

     す。

     掛金の日々の経理処理については、経費処理と資産計上の2つやり方があります。

     会社の実状に合わせて都合の良い方を選択してください。

     以上、経営セーフティ共済の内容をご紹介してきました。上手に活用して、経営に役立て

     てください。

  • 中小企業法人に対してかかる税金

    中小企業法人に対してかかる税金

    はじめに

    我々の生活とは切っても切れない関係である租税の納税だが、中小企業法人(以下、中小法人)の場合果たしてどのような税金が課税されるのだろうか?

    ここでは中小法人が納めることとなる法人税等の種類及びその税率について解説をしたいと思います。

    なお、これより先「中小法人」という表現を使用しますがこちらについても法人税法律上厳密に定義がされております。

    そのためここで解説をする各制度における中小法人とは下記を意味します。

    【中小法人】

    事業年度終了時において「資本金の額若しくは出資の額が1億円以下の法人」であることまたは「資本金若しくは出資を有さない法人」のことをいう。

    ただし、資本金の額又は出資の額が5億円を超える法人(大法人)による100%支配関係がある場合は対象外となります。

    よく誤解される点として「資本金の額」はあくまでも資本金であり、資本剰余金は含めない金額である。

    要約すると謄本に記載されている資本金の額に基づいて判定をします。

    中小法人が納める税金の種類

    一般的に中小法人が納める法人税等の種類は下記の通りとなります。

    税金の種類

    備考

    特徴

    法人税

    国へ納付する税金

    所得に課税

    法人住民税

    都道府県・市区町村へ納付する税金

    所在地に課税

    法人事業税

    都道府県・市区町村へ納付する税金

    所得に課税

    上記以外にも消費税、地方消費税、固定資産税、不動産取得税、自動車税など様々な税金があるが、これらに関しては「所得」とは別の特定事由が生じた場合に課税がされるため本項目では割愛する。

    事由の例:課税事業者になった、固定資産を保有している、不動産を取得した場合など。

    それぞれの税金の計算方法及び税率

    法人税

    法人税の計算方法

    まず法人税については下記の算式によって計算がされる

      「所得金額 × 税率 = 法人税」

    結論だけ見ると非常にシンプルであるため「所得金額」の考え方と本年度の「税率」をしっかりと把握しておけば納めるべき法人税の額のシミュレーションも立てやすくなります。

    正確には「各事業年度の所得の金額 × 税率」となる。

     ここでは簡便的に「所得金額」と表記致します。

    所得金額とは

    そもそも「所得」という表現に抵抗がある人も多いと思いますが、所得とは儲けを意味すると考えていただければイメージがしやすいと思います。

     この所得金額は下記のように計算がされる。

    「その事業年度の益金の額からその事業年度の損金の額を控除した金額」

    つまり、「益金損金=所得金額」となる。

    益金とは会計上の収益に類似する事項で損金とは会計上の原価・費用・損失に類似する事項となる。

    「類似」とあるのは会計行為が学問であるのに対し、税法は法律であることから生じる相違点があるためである。

    近い性質を保有しているが異なる事項であることを示すため「益金・損金」という表現を使用しているのである。

    ただし、現在多くの中小法人は税法を前提とした会計帳簿を作成するため基本的には「決算の利益=所得金額」になるとの理解で問題がないでしょう。

     

    税率

     現状(2019年10月1日以降。以下同じ)の法人税の税率は下記の通りとなる。

     

    所得金額

    税率

    800万円まで

    15%

     

    19% ※適用除外事業者の場合

    800万円を超える部分

    23.2%

    つまり年間1,000万円の場合の法人税は下記の通りとなる。

     ・800万円×15%  =120万円

     ・200万円×23.2%=46.4万円

     ・上記の合計:166.4万円

    適用除外事業者とは過去3年間の平均所得金額が15億円を超える法人をいう。

    地方法人税の計算方法

     これについては元々地方税だったのだが、地域格差をなくすため国が全国から租税を回収のうえ、各地方公共団体へ分配するために創設された税金である。

     名称のためややこしいが、分類はあくまでも「国税」であり納付先は国となります。

     地方法人税については下記の算式によって計算がされる

     「法人税額 × 10.3% = 地方法人税」

    地方法人税に関してはあくまでも法人税の一部と認識するとわかりやすいと思います。

    法人住民税

    法人住民税の計算方法

    法人住民税に関しては法人税と比較をすると少々複雑になっております。

    具体的には下記表の税額の合計が法人住民税となります。

    納付先

    計算方法

    特徴

    都道府県

    資本金や従業員の人数に応じて課税

    (均等割)

    一定金額

    赤字でも課税

     

    法人税を基礎に課税

    (法人税割)

    法人税額×税率

    市区町村

    資本金や従業員の人数に応じて課税

    (均等割)

    一定金額

    赤字でも課税

     

    法人税を基礎に課税

    (法人税割)

    法人税額×税率

      つまり、「法人税割 + 均等割 = 法人住民税」となる。

     なお、東京23区にのみ事務所有する場合は納付先から「市区町村」が無くなり代わりに都民税としてまとめて納付をすることとなる。

     それ以外の場合は原則通り事務所の所在する都道府県及び市区町村へと納税をすることとなる。

     税率に関して

      中小法人の税率は下記の通りである

       ・都道府県の法人税割 1%

      ・市区町村の法人税割 6%

     なお、均等割に関しては基本的に都道府県が2万円、市区町村が5万円の合計7万円となる。

     東京23区の場合は前述の通り納付が都民税のみとなるため、都道府県・市区町村の分を合わせた7万円が納付税額となる。

     均等割の注意事項

     均等割に関してはたとえ中小法人の範囲内であっても法人の規模が大きくなると納税額も増加するため注意が必要となる。

     たとえば東京都の均等割は下記の通りとなる。

     ※東京23区内のみに事務所を有する場合の均等割

    資本金当の額

    従業員数

    税額

    1千万円以下

    50人以下

    7万円

     

    50人超

    14万円

    1千円万超~1億円以下

    50人以下

    18万円

     

    50人超

    20万円

    1億円超~10億円以下

    50人以下

    29万円

     

    50人超

    53万円

     よく「1千万円の壁」と言われる理由の一つがこの均等割である。

     この税金は他の税金と違い、たとえ赤字であっても納税をする必要のある税金である点が大きな特徴となる。

     そのためむやみやたらと資本金を増やした場合思わぬ納税が生じる可能背があるため資本金等の額には重々気を付けましょう。

    なお、今までは「中小法人」の場合の税率を記述していたが、均等割だけは「資本金等の額」にて判定が行われる点を注意する必要がある。

      ※資本金等の額※

       資本金 + 資本剰余金 = 資本金等の額

    法人事業税

    法人事業税の計算方法

     法人事業税に関しても複数の計算項目を合計した金額が税額となる。

    具体的には下記①及び②の合計となる

    ①所得割

    所得金額

    税率

    400万円以下の部分

    3.75%

    400万円超~800万円以下の部分

    5.665%

    800万円超の部分

    7.48

    軽減税率不適用法人

    7.48 ※最高税率のみ使用

    軽減税率不適用法人とは、資本の額又は出資の額が1千万円以上の法人で、かつ、事務所棟がある都道府県の数が3以上の法人をいう。

    ②特別法人事業税

    上記 ①(所得割) × 37%

    法人事業税の補足

      中小法人であれば関係はないが、資本金が1億円を超える場合は「外形標準課税」と呼ばれる事業税も課税されることとなる。

      これは事業所の付加価値(事業所の床面積や従業員数など様々な事項により計算)や資本金等の額に応じて税金が課税される制度である。

      そのため、資本金の額を決める際はくれぐれも注意が必要となる。

    申告期限と納付期限

     ここまで触れてきていなかったが、一番重要な事項となる「いつまでに申告をして、いつまでに納付をすれば良いのか」について触れていきます。

     原則

     各税金共通として、決算日から2か月以内に申告を行い、かつ、2か月以内に納付をする必要がある。

     つまり3月決算法人の場合は2か月後の5月末日が申告及び納付期限となる。

     なお、末日が土日祝の場合はその翌日が期限となる。

     

     特例

     「申告期限の延長の特例の申請書」を税務署へと提出している場合は申告期限を1か月延長することが可能となる。

     ※定款に一定の事項の記載が必要

     この場合は申告期限が1か月延長され、決算から3か月後が申告期限となる。

     ただし、申告の期限が伸びるだけであり、納付期限は2か月以内のままである。

     そのため納付は先行して行わなければならない点を注意。

    終わりに

     「中小法人対してかかる税金」と一言でいってもこれだけの種類の税金があります。

     会社の経営にあたってはどうしても資金繰りという課題が常に伴います。

     自分がいつ・いくらの税金を払う必要があるのかを理解しておくことで将来の納税に対して備える準備が出来るでしょう。

     決算が到来し、申告を行う間際において納税資金がないという事態を避けるためにも少しでも税金への理解が深まったのであれば幸いです。

     資金繰りといえば、本税が一定金額を上回った場合、申告から半年後に「予定納税」という形で税金の前払いを行う必要のある制度をご存じでしょうか?

     「税金は決算のあとにしか生じない」と考えていると資金に大打撃を受ける可能性があるため正しい納税スケジュールと納税額のシミュレーションは欠かさないよう注意願います。

     「中間納付に関する制度」についてはまた別の記事を詐称願います。

  • 法人の接待交際費の経費計上で気をつけるべきポイント

    法人の接待交際費の経費計上で気をつけるべきポイント

    みなさんこんにちは。

    この記事では、「交際費はいくらまでなら経費にできるのか?」ということについてお話ししたいと思います。

    法人の様々な支出の中でも交際費は少し特殊で、経費として計上できる金額に上限があります。

    そもそも交際費とは何か、経費にできる金額に上限があるとはどういうことか、その上限金額はどのように計算するのか…

    このようなことをご説明していきます。

    それでは、どうぞ!

    そもそも交際費とは?

    まず、交際費についてご紹介します。

    (実務の際は「接待交際費」という名目で使われることが多いので、以降は接待交際費と記載させていただきます。)

    接待交際費とは、得意先を接待するためにかかった費用全般を指します。

    国税庁のサイト上では、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用をいいます。」と記載されております。

    接待交際費の代表的なものとしては、接待のための飲食代や、得意先への贈答品代などが挙げられます。

    接待交際費から除かれるもの

    ただし、次に掲げる費用は接待交際費等から除かれます。

    • 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用(社員旅行や社内運動会などがこれにあたります。)
    • 飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます。)のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用
    • (こちらは「会議費」となり、全額費用計上(損金計上)が可能です。)
    • その他の費用
    • イ カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用(会社の宣伝という側面を持つため、「広告宣伝費」に分類されます)
    • ロ 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用(会議に関連した支出は「会議費」となります)
    • ハ 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

    特に、社内交際費と福利厚生費、接待交際費と会議費の区別については論点となることが多いので、しっかり区別できるようにしましょう。

    接待交際費の損金算入限度額とは?

    続いて損金算入限度額についてご紹介します。

    まず、損金とは税務上(法人税計算上)の考え方で、法人の資産の減少の原因となる原価や費用、損失などの額を指します。

    そして、損金算入限度額とは、損金として計上できる金額の限度のことを指しています。

    普段は「損金」ではなく「費用」という呼び方で支出を表すことが多いかと思いますが、費用は会計上の考え方で、税務上の考え方とは若干異なる面があります。

    多くの場合、法人の費用と損金は一致するのですが、一部の支出においては、会計上費用であっても税務上損金と認められないことがあります。

    そして、その支出の1つが接待交際費です。

    接待交際費には、損金として計上できる金額に限度があります。

    全額を損金に出来るとは限らないので、その点で注意が必要になります。

    接待交際費の損金算入限度額計算方法

    続いて、接待交際費の損金算入限度額の計算方法についてご紹介いたします。

    接待交際費の損金算入限度額ですが、期末資本金の金額または出資金の額によって計算方法が変わります。

    ①期末資本金の額または出資金の額が1億円以下である法人

    イ. 800万円に該当事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額に達するまでの金額。

    ロ. 飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く)の50%に相当する金額

     (このような飲食代のことを「接待飲食代」と言います)

    イ・ロのうち、大きい方の金額が損金算入限度額となり、これを超える部分の金額が損金不算入となります。

    簡単にいうと、

    (1)800万円×該当事業年度の月数÷12

    (2)接待飲食代×50%

    (1)(2)のうち大きい方が、接待交際費の損金算入限度額となります。

    例えば、接待交際費が1,000万円、接待飲食代が900万円で、該当事業年度の月数が12ヶ月であった場合

    (1)800万円×12ヶ月÷12ヶ月=800万円

    (2)900万円×50%=450万円

    (1)>(2)となり、800万円が損金算入限度額となります。

    一方、接待交際費が2,000万円、接待飲食代が1,800万、該当事業年度の月数が12ヶ月であった場合

    (1)800万円×12ヶ月÷12ヶ月=800万円

    (2)1,800万円×50%=900万円

    (1)<(2)となり、接待飲食代の50%である900万円が損金算入限度額となります。

    ②期末資本金の額または出資金の額が1億円を超えている場合

    交際費等のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く)の50%に相当する金額を超える部分の金額

    期末資本金の額または出資金の額が1億円を超えている場合は、800万円の基準は使用できませんのでご注意ください。

    一人5,000円以下の飲食代はこうすれば会議費になる!

    上記1の②にて、「会議費」という概念について少しご説明させていただきました。

    会議費は接待交際費と違い、全額が損金になる支出です。

    そのため、会議費にすることができる支出は全て会議費として計上すべきであると言えますが、経費を会議費として計上するためにはいくつか条件があります。

    イ. 飲食等の年月日

    ロ. 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係

    ハ. 飲食等に参加した者の数

    ニ. その費用の金額ならびに飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の名称、住所等)

    ホ. その他参考となるべき事項

    これらの情報を、該当の支出に関するレシートまたは領収書の裏面等に記載する、もしくは何らかの書類に記載して保存しておく必要があります。

    せっかく全額費用および損金に計上できる支出なのに、情報の保存を怠ると会議費として認められない場合があります。

    それではもったいないので、情報の保存はしっかりと行うようにしましょう。

    まとめ

    いかがでしたでしょうか。

    今回の記事について簡単にまとめると

    1. 接待交際費とは、取引先との飲食や贈答品等の支出をいう
    2. 損金算入限度額とは、税務上損金として計上できる金額の上限を指す
    3. 交際費の損金算入限度額は、期末資本金の額または出資金の額により計算方法が変わり

    期末資本金の額または出資金の額が1億円以下の場合

    (1)800万円×該当事業年度の月数÷12

    (2)接待飲食代×50%

    上記のうちいずれか大きいほう

    期末資本金の額または出資金の額が1億円を超える場合

    接待飲食代×50%

    • 会議費として計上するためには、レシートや領収書、もしくは別途書類等に会議費に関する情報を記載して保存しておく必要がある

    となります。

    接待交際費の損金算入限度額について、少しでも理解の助けになれれば幸いです。

    それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!