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  • 消費税の計算の仕組み(原則課税)

    消費税の計算の仕組み(原則課税)

    はじめに

    消費税の納税義務が生じた場合にはおおまかに分けてその計算方法が2通りあることはご存じだろうか。

    一方は原則的な計算方法となっており、もう一方は特定の届出書を提出することによって適用を受けられる簡易課税制度となっております。

    名前の通り消費税を簡易的に計算するのが簡易課税制度、厳密にそして煩雑は方法により計算をするのが原則課税となります。

    ここでは原則的な計算方法、つまりは原則課税について触れて行きたいと思います。

    消費税の計算方法(結論)

    消費税の納税額については下記の算式により計算がなされます。

    「課税売上に係る消費税  課税仕入に係る消費税 = 納税額」

    ここではその計算の基礎となる課税売上に係る消費税と課税仕入に係る消費税について順に確認をしていきたいと思います。

    【ポイント】

    課税売上に係る消費税 = 課税売上高と連動しています。

    課税仕入に係る消費税 = 仕入税額控除と連動しています。

    課税売上高について

    これは消費税の課税の対象となる資産の譲渡等(注1)を行った場合における当該売上高のことを指します。

    このためどのような収入が消費税の課税の対象となり、どのような収入が消費税の対象とならないのかを認識することが重要となります。

    1…譲渡等には物の販売のみならず、サービスの提供などあらゆる取引を含めています。

    【区分】

    不課税

    消費税は国内において事業の対価を得て行う取引に課税をするため、そもそも国外で行われた取引や寄付といった対価(見返り)の生じない取引について消費税を課税しないこととなっています。

    非課税

    こちらは国内において事業の対価を得て行う取引ではあるが、社会政策配慮の観点や課税対象になじまないものについて消費税を課税しないこととなっています。

    免税

    こちらも国内において事業の対価を得て行う取引ではあるが、一定の輸出等に関して消費税を免除するという規定となっております。

    一件非課税と似てはいますが後述する「課税売上割合」や「仕入税額控除」に影響を及ぼします。

    課税売上

    上記以外が消費税の課税の対象と成る取引となります。

    消費税の区分

    消費税を含めるか否か

    不課税

    消費税の対象外

    寄付や贈与、国外取引等

    非課税

    消費税の対象外

    土地や株の売買、預貯金の利子など

    免税

    消費税は免除

    一定の輸出など

    課税

    課税の対象

    上記以外の取引

    課税売上割合について

    読んで字のごとく、4つの区分の内課税売上高の割合がいくらであるかを算出したのが課税売上割合となります。

    後述する仕入税額控除に大きな影響を与えるため非常に重要な論点となります。

    【計算方法】

     ※分子・分母共に税抜の金額で計算

    【ポイント】

    • 不課税取引はそもそも消費税の対象外であるため分母・分子ともに算入されません。
    • 非課税売上は社会政策上の配慮から消費税の対象外となっているに過ぎないため、全体の売上高(分子)には算入されます。ただ、当然消費税は課税されていないため分子には算入せずに課税売上割合を算出します。
    • 免税売上については前提として「課税売上である。だが一定の輸出については消費税を免除する」という規定となっているため分母・分子ともに算入されます。

    仕入税額控除に関して

    当該規定については課税仕入を行った場合において、その課税仕入に係る消費税を前述の課税売上に係る消費税から控除するという規定となっております。

    ただし、前述の課税売上割合に応じて計算方法が異なります。

    【課税売上割合が95%以上の場合】

    「全額控除」を適用

    要約すると課税仕入に係る消費税の全額を課税売上に係る消費税から控除することが可能となります。

    【課税売上割合が95%未満の場合】

    この場合は「個別対応方式」と「一括比例配分方式」のいずれかを選択して適用することとなります。

    計算方法が煩雑であるためそれぞれ具体的に見て行きましょう。

    個別対応方式

    まず前提として課税仕入に係る消費税額の生じるすべての取引を下記の通り区分する必要がございます。

    • 課税売上にのみ要する課税仕入等に係るもの
    • 非課税売上にのみ要する課税仕入等に係るもの
    • 課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入等に係るもの

    上記に区分した後、下記の算式に基づいて計算した金額が仕入税額控除の対象となります。

    仕入税額控除 = ① + ×課税売上割合

    このように前提条件が非常に煩雑であり、そもそも区分をすることが非常に難しいため専門家指導の下でないとなかなか採用出来ない方法となっております。

    そこで簡便的に計算をすることが可能となる制度が次の項目となる「一括比例配分方式」となります。

    一括比例配分方式

    こちらの計算方法は非常にシンプルとなっており、下記の通りとなります。

    仕入税額控除 = 課税仕入に係る消費税額 × 課税売上割合

    個別対応方式のように取引を区分する必要がなく、単純に課税売上割合を乗じるだけとなります。

    計算がシンプルな反面2点程注意点がございます。

    【注意点】

    • 個別対応方式の方が有利となる場合がある

    これは両方を比較した場合個別対応方式の方が有利となるケースがある点です。

    前述の通り個別対応方式は事前に取引を区分する必要があるため初めから一括比例配分方式を選択しようと思って区分経理をしなかった場合、個別対応方式を選択できなくなってしまう余地が生じる点。

    • 1度選択すると2年間は継続して適用しなければならない点

    上記の通り一度選択をすると2年間は個別対応方式を選択することが出来なくなります。

    そのため一括比例配分方式を選択する際には翌期の状況も見据えたうえで選択をしなければなりません。

    輸入消費税がある場合の取り扱い

    輸入を行う事業者ならご存じとは思うが、商品を輸入した際は税関を通じて関税及び消費税並びに地方消費税(以下、消費税)を納める必要が生じます。

    ここで支払った消費税についても前述の仕入税額控除と同様に課税売上から控除することが出来ます。

    消費税の記載がない場合の計算方法

    請求書を受領したが消費税の記載がなく「請求金額10,000円」とだけ記載がされており、先方からは「うちは免税だから消費税を上乗せしていない」と言われることもあると思います。

    果たしてこれはどのように取り扱えばいいか悩むこともあると思います。

    ただし、このような取引であっても原理原則に従いその取引が不課税・非課税・免税・課税のうちどの区分に属するかを検討したうえで処理をしましょう。

    たとえ相手が免税事業者であろうと、消費税は国内において事業の対価を得て行う取引であるため、この要件に該当したら消費税の課税の対象と成ります。

    従って上記のような請求書を受領してもこれは「税込10,000円」と読み替えれば良い。

    消費税率が10%であれば1.10で割り戻せばよいためこの例における税抜き価格は「10,000÷1.19,091円」となる。

    なお、1円未満の端数処理について切上げ・切捨て・四捨五入は任意で選択可能だかもし税抜価格を9,090円と計算した場合消費税が9,090×10%909円となってしまい合計額が10,000円に満たないという結果となります。

    そのためここでは税抜9,091円として計算をしております。

    インボイス方式に伴う今後の計算方法

    このように「相手が免税事業はであるか否かに関係なく、取引の実態に応じて仕入税額控除を適用する」というのが今までの消費税の取り扱いでした。

    ただし今後は消費税の大幅改正、適格請求書保存方式(インボイス方式)の導入に伴い上記のような取引は一掃されることとなります。

    本格的な導入は2023101日以降となりますが今の内から消費税の計算に多大な影響を与える制度が導入されることを留意しましょう。

    終わりに

    日常生活においては当たり前のように生じる消費税。

    事業者の場合はこれらを預かる立場となるためこのように納税額の計算が非常に複雑となっております。

    誤りが生じないよう正確にその取引がどのような区分に属するかを検討しましょう。

  • 所得税が高い?法人化を検討すべきタイミングとは?

    「儲かってきたら法人化したほうがいいんです」

    こんな話をよく耳にしますがこれってホントなの?

    そこで儲かってるあなたのために法人化した際のメリットデメリットについて説明します。

    法人化のメリット

    それではまずは法人化のメリットについてみていきましょう。

    税率や計算構造の違い

    法人には法人税、個人には所得税が課税されます。

    法人税と所得税とでは税率や計算構造が違うのです。

    法人に課される税金と個人に課される税金の税率と計算構造を見ていきましょう。

    個人の税金

    それではまず個人の税金についてです。

    個人の税金は所得税、住民税、事業税が課税されます。

    所得税

    所得税は所得(収入ー経費)つまり儲けに対して税率をかけて課税される税金です。

    所得税の税率は超過累進税率になっていて所得が多くなればなるほど税率も上がっていきます。

    所得税の税率は下記の通り。

    課税される所得金額

    税率

    控除額

    195万円以下

    5% 0円

    195万円を超え 330万円以下

    10% 97,500円

    330万円を超え 695万円以下

    20% 427,500円

    695万円を超え 900万円以下

    23% 636,000円

    900万円を超え 1,800万円以下

    33% 1,536,000円

    1,800万円を超え4,000万円以下

    40% 2,796,000円

    4,000万円超

    45% 4,796,000円

    住民税

    住民税も同じく所得(収入ー経費)に対して課税される税金になります。

    住民税の税率は一律10%です。

    所得が少なくても住民税は10%とっていきますので結構つらいです。

    事業税

    そして個人事業主にの所得(不動産所得、事業所得)に対して課税されるのが事業税です。

    事業税は事業主控除という控除が290万円あり、所得が290万円以下の場合は事業税はかかりません。

    事業税の税率は業種によって異なります。

    ほとんどの業種で5%になり、事業所得、不動産所得から事業主控除290万円を差し引いて税率5%をかけると事業税が計算できます。

    法人の税金

    法人の場合、個人よりも多くの種類の税金が課されます。

    法人税、地方法人税、事業税、地方法人特別税、住民税、住民税均等割

    法人税

    法人税がメインとなる税金で、所得(収入ー経費)に対して税率をかけて計算します。

    税率は現在23.4%が本則税率ですが、中小企業は年間800万円までの金額は15%になります。

    地方法人税

    地方法人税は法人税に4.4%の税率で計算します。

    事業税

    事業税は所得に税率をかけて計算します。

    税率は所得の規模や資本金の規模によって変わります。

    地方法人特別税

    地方法人特別税は事業税に43.2%

    住民税

    住民税は法人税に税率をかけて計算する税金です。

    住民税均等割

    住民税均等割は事業所があるだけでかかる税金です。

    従業員数と会社の規模で金額が決まります。

    法人個人の税率・計算構造の違いまとめ

    法人個人の税金計算の構造の違いを説明しました。

    大きく異なるところは所得税は超過累進税率で所得が多くなれば税率が上がること。

    法人税は基本的に比例税率で所得が多くなったとしても一定の税率のままであること。

    この点が法人と個人の有利不利を検討する際に大きく影響してきます。

    役員報酬として給与所得にできる

    法人化すると役員報酬という形で個人に支給して個人の給与所得にすることができます。

    個人事業主の場合は事業所得となる所得ですが、給与所得にするメリットは給与所得控除が使えるからです。

    個人の場合、事業所得なので65万円の青色申告特別控除がつかえるのですが、法人化して法人からの役員報酬にすると給与所得控除で65以上の控除が使えるようになります。

    給与所得控除の金額

    給与等の収入金額

    (給与所得の源泉徴収票の支払金額)

    給与所得控除額

    1,800,000円以下 収入金額×40% (650,000円に満たない場合には650,000円)
    1,800,000円超3,600,000円以下   収入金額×30%+180,000円
    3,600,000円超6,600,000円以下

    収入金額×20%+540,000円

    6,600,000円超10,000,000円以下

    収入金額×10%+1,200,000円

    10,000,000円超 2,200,000円(上限)

    役員報酬の損金算入要件に注意

    ただし、法人側で役員報酬を経費にするためにはある要件を守らなければなりません。

    毎月一定の時期に定額支給する定期同額給与

    毎月同じタイミングかつ同じ金額を支給している場合には役員報酬を経費にすることができます。

    ずっと同じだといつまでも給与を上げることができないので、事業年度開始後3か月間は役員報酬の改定時期として定期同額給与の金額を変更することができます。

    決算終了から2月以内に届け出をする「事前確定届出給与」

    あらかじめ決まった時期に決められた金額を支給する旨の届出をしている場合には、届出通り支給したときに限り経費にすることができます。

    所得の分散が出来る

    法人化することによって社長と法人で所得の分散ができて所得税の累進税率を緩和することができます。

    さらに所得を分散することもできます。

    家族を社員に

    例えば家族を社員にして給与を支給することができます。

    個人事業主の場合には、親族に給与を支給しても原則経費にすることができませんでした。

    法人化することでより所得の分散が図られ所得税の税率を下げることができます。

    経費の幅が広がる

    個人の場合は経費にすることができなかった支払いを経費にすることができます。

    生命保険料

    個人の場合は自分にかけている生命保険の保険料は生命保険料控除という形で全額経費にすることができませんでした。

    法人の場合は社長にかけていても経費にすることができる保険もあります。

    自宅を社宅に

    自宅を法人で購入してそれを個人に貸し付けることで自宅の家賃を経費にすることができます。

    出張手当

    出張旅費規程を整備することで規程に記載のある出張を行った場合には出張手当を経費にすることができます。

    慶弔見舞金

    慶弔見舞金についても個人時代では経費にすることができませんでしたが法人の場合には会社の経費とすることができます。

    退職金

    個人時代には退職金という概念がありませんでしたが、法人の場合は役員退任の際に退職金を支給することができます。

    退職金は不相当に高額でないものでなければ経費として認められません。

    欠損金が9年繰越し

    青色申告だと3年が限界だった損失の繰り越しが、法人の場合は9年間の繰り越しがかのうです。

    決算期を変更できる

    個人の場合は1月1日から12月31日までと決算期が決められていますが、法人の場合は自由に決めることができます。

    設立2期は基本的に消費税が免税

    消費税の納税義務の判定は前々事業年度で行います。

    設立から2期経過しない法人は前々事業年度というものが存在しないので基本的には消費税はかかりません。

    ただし、最近は法律の網が細かくなってきており設立2期目までにも消費税がかかってくるケースも存在します。

    専門家にご相談ください。

    法人化のデメリット

    法人化は人によっては大きなメリットがありますが、メリットがない人もいます。

    法人化のデメリットについてご説明します。

    交際費に制限あり

    中小企業の場合、年間800万円までの交際費は経費として認められますが、これを超えると経費として認めてもらえません。

    個人の場合はざっくりいうと経費の基準は収益に貢献した支払か否かという判断基準で経費として認められるかを判断していくのでこの考え方に合致するものはいくらでも経費にすることができます。

    設立費用がかかる

    法人設立には設立費用がかかります。

    設立費用は、設立する会社の種類(合同会社や株式会社など)にもよりますがだいたい20万円〜30万円程度です。

    廃業する際にも同じくらいの費用がかかってきます。

    個人事業であれば、開業も廃業も書類を提出するだけ。費用はかかりません。

    維持費がかかる

    法人には個人の場合では無かった維持費がかかります。

    住民税均等割

    住民税均等割という税金です。

    均等割とは、会社の規模や従業員数によって税額が決まる税金で、利益が出ていない赤字の法人にもかかります。

    世知辛い。

    税理士費用

    これは、頑張れば節約可能ですが税理士に支払う顧問料、決算料もかかってきます。

    個人のときは自分で確定申告をしている方もいると思いますが、法人になるとなかなか難しいです。

    税制が毎年変わるうえに会計ソフトに加えて税務申告ソフトも買わないといけない。

    税務申告ソフト代と税理士に決算だけやってもらう場合では、出費もあまり変わらないでしょう。

    役員報酬を自由に変更出来ない

    通常給与は経費になりますが、社長など役員に支払う給与は簡単には経費には出来ません。

    いつでも簡単に経費に出来てしまうと儲かったら社長にたくさん給与を払って利益を減らして税金を逃れることができてしまうからです。

    法人が社長に支払う給与を経費できるルールがあって、そのルールを守らなければなりません。

    社会保険料の負担が生じる

    法人は社会保険の加入が必須です。

    また、従業員の社会保険料を法人が半額負担しなければなりません。

    個人であれば小規模の事業者は社会保険加入が必須ではありませんので注意が必要です。